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乗り物好きの大型二種免許ペーパードライバがお送りする、乗車記、搭乗記です。ローカルな乗り物から世界のファーストクラスまで。

若松線 DENCHA 乗車記 プリウスの約300倍のバッテリーで動く電車!

鉄道車両のことをすべて「電車」と呼ぶこと、多いですよね。年齢や地方によっては「汽車」と呼ぶこともあるかもしれません。

でも鉄道マニアに言わせると、鉄道の営業線を走っているのは全て「列車」であり、「電車列車」や「気動車列車」が走っているんだよというもはや意味の分からない話になってしまいがちです。

これは単純に言うと動力源の違い、例えば電気だったり軽油を使った内燃機関だったり、ということとです。ちなみにSLだと外燃機関ですけどね。

ですが、今回ご紹介する「DENCHA」は、もうこれからは列車は全て「電車」と呼べばいいんじゃない?というくらいの破壊力⁉を持った車両だと個人的には思います。

これまでは「電車」としては走れなかった、架線が無い区間も、電池に蓄電した電気を使って、「電車」として走ってしまうのですから。

そんな「DENCHA」に試乗してきましたのでレポートしてみます。

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 「DENCHA」は筑豊本線折尾~若松間、愛称 若松線に2016年4月に導入された、蓄電池駆動電車です。

「DENCHA」とは「"D"UAL "EN"ERGY "CHA"RGE TRAIN」の頭文字をとった愛称です。北九州の方便で「~ちゃ」と語尾につけるんですが、これも意識したのかもしれませんね。何がDUALかと言うと、架線のある区間で電車として走行するモードと蓄電池の電池で走行するモードの2つがあるのでDUALということの様です。

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外観は、形状は既存の817系電車と同じですが、塗装は異なります。青は地球の青をイメージしているそうです。

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写真がすっきりしているのは架線が無いからです。見た目は電車なのに不思議な感覚です。

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エクステリアデザインとインテイリアデザインはおなじみ水戸岡鋭治氏です。ロゴが散りばめられています。

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床下の青い箱がバッテリーです。383.6kWhのリチウムイオン電池だそうで、これはプリウスPHVの電池容量8.8kWhの実に約43倍の容量を持っています。1回の充電で約90km走られるそうです。

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青くてカジュアルな箱に見えますが、実は中はずっしり大容量バッテリーです。

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パンタグラフは下ろしていますね。

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形式上も電車扱いです。JR九州で形式にアルファベットが入るのは初めてですね。

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バッテリーを積んでいるので、トレーラー車でも重いですね。

日立製作所の製造です。

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車内を見てみます。

車内も外装と同じく青系のシートモケットです。ロングシートで完全に通勤電車ですが、通勤電車ですら九州では木を使ったシートです。一見すると贅沢に見えますね。壁面は真っ白で、LED照明と合わせて明るい雰囲気です。ドアのところのつり革が円形に並んでいるのが遊び心があって面白いですね。ここら辺は817系電車と同じです。

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座席をよく見てみると、座面こそクッションがありますが、背中は木に布をあてただけですね。田園シンフォニーもそうだったのですが、これでは長時間乗車は背中がきついです。ちなみに、白い革張りのシートは優先席です。

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屋根にパンタグラフが載っている部分は天井が低くなっています。

これは、非電化区間の小さい断面のトンネルをくぐれるように、この部分だけ屋根を低くしているためだそうです。そして、機器室があります。やはり床下にバッテリーを積んでいるせいで床下の空きスペースが無いんだと思います。

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ドアにはくろちゃんがいます。通勤電車でも遊び心は大切です。あと、子どもの食いつきも違うでしょうね。

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スマートドアと呼ばれる半自動ドアとなっています。

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貫通扉はガラス製です。

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液晶の案内表示器がありますが、CMなどは流れません。電気の流れが模式的に分かるようになっています。

乗っていても普通の電車という感覚で、違和感が無いのが何よりすごいことでしょう。蓄電池だと、発進時の加速は架線モードよりゆっくりだそうですが、気づきませんでした。これまでは気動車がのっそりと走っていた区間なので、一気に洗練された感じです。

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さて、筑豊本線の終点若松駅は、以前は筑豊地方の炭田からの石炭を各地に船で積み出す要所でした。

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現在は、無人駅になり、スマートサポートステーションという電話案内と遠隔監視の駅に変わりました。改札機もつまりの原因となる切符投入口は無くなり、ICカードのみの対応となっています。切符は運賃箱に入れるだけなので、利用者のモラルが問われますね。

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地震の時は近くの避難所に避難するように案内がありました。

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無人駅なのですが、東筑軒の立ち食いうどん店があります。折尾駅かしわうどんかしわめしで有名なうどん屋さん、駅弁屋さんですね。

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無人駅なのにうどん屋さんはあるとは、すごくアンバランスな気がします(笑)

JR九州の合理化も行きつくところまで来ている感じですね。4両編成の特急列車のワンマン運行も2017年から導入されました(驚)

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 かしわうどんのかしわ肉追加で頂きます。410円です。おつゆに甘みがあって甘辛いかしわと柔らかめのうどんがよく合います。

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若松駅は、かつては石炭を積んだ貨物列車が集まる駅でした。

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 戦前は日本一の貨物取扱量だったそうです。

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ちなみに、若松駅付近は北九州市に合併する前の旧若松市だったところで、若松市では若松市営バスを運行していました。その名残で、現在も若松折尾地区を中心に北九州市営バスが運行されています。西鉄バスの牙城である福岡県において、北九州市営バス西鉄バスに交じって元気に運行しています。

そんな北九州市は、以前の公害のイメージを払拭すべく環境都市を目指しており、その一環で電気バスが運行されています。しかし、平日のみの運行のため、私は乗れませんでした。

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なので、代わりに新車のエアロスター若松駅から乗車して、都市高速を経由して一気に小倉駅まで向かいました。福岡は一般の路線バス車両が都市高速道路を走行する路線がたくさんあり、まるでワープする感覚です。鉄道で小倉に行くより断然早いので便利です。

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 小倉駅の新幹線口に着きました。バスは若松から小倉駅を経由して北九州市役所を通り、再び小倉駅から若松方面に戻るループ運用です。f:id:liner883:20170823220633j:plain

 若松という、かつては石炭で栄えた地で、化石燃料を燃やして走る鉄道車両からの決別⁉という点で、興味深いなと思いました。今後は運用線区が拡大していくものと思われます。

リチウムイオン電池を大量に積むということは、初期コストが非常にかかると思うのですが、それでも気動車より運用面で低コストという判断なのでしょう。

フランス、イギリスでは2040年からはエンジンを積んだ自動車は販売できなくなるというニュースが流れましたが、意外とそういう時代は早く来るのかなと感じた試乗でした。