【南阿蘇鉄道】トロッコ列車ゆうすげ号で阿蘇の風を感じる旅を! 高森~中松 乗車記2018.3 高森~立野全線復旧に向けて走り出しました
地震後は、高森~立野間の内、被害が比較的小さかった高森~中松間の約7㎞で営業運転を再開しています。
南阿蘇鉄道では、国鉄高森線から第三セクターに転換してすぐの1986年からトロッコ列車「ゆうすげ号」が走っています。
地震後も春~秋にかけての土日祝日や春休み、夏休み期間に走っています。
トロッコ列車に乗車してきましたので簡単なレポートをお送りします。
トロッコ列車ゆうすげ号の乗り方
トロッコ列車は3月~11月の土日祝日と春休み期間、GW、夏休み期間のみ運行です。
運行カレンダーは公式HPをご確認ください。
当日高森駅で先着順で切符を販売しています。
今回乗車した際も当日高森駅で購入しました。
団体であれば予約ができるようですが、残念ながら個人は当日のみ購入可能です。
GW中などは混むでしょうから、迷惑にならない範囲であらかじめ団体予約が入っていないか確認するのも手かもしれませんね。
運賃+トロッコ料金で片道790円(子ども450円)、往復だと1,380円(子ども800円)です。
所要時間は片道25分、1日に2往復の運行です。
高森駅までのアクセス
熊本市内や熊本駅、阿蘇くまもと空港からは、都市間バスでのアクセスが可能です。
乗り換え無しの高森行き快速たかもり号、もしくは宮崎県の延岡行き特急たかちほ号で高森中央バス停まで行けます。高森中央バス停と高森駅は徒歩圏内です。
特急たかちほ号は2018年4月1日から予約制です。
快速たかもり号は予約不要です。
高森駅には無料の駐車場もあるので、クルマ利用でも大丈夫です。
乗車レポート
高森駅から乗車しました。
立派な駅舎です。
高森駅の切符売り場では、悲しい運賃表が…
あえて不通区間にバッテンをつけて、復旧する意思を示しているのでしょう。
高森駅では様々な南阿蘇鉄道グッズを販売しているので、おみやげにぜひ購入されてはいかがでしょうか?
トロッコ列車は、トロッコ客車3両を両サイドのディーゼル機関車で挟んだ形で運転されます。
DB16形ディーゼル機関車は、以前のDB10形機関車の老朽化に伴い10年程前に新造された新しい機関車です。
300馬力程度の小さな機関車で、軽やかなエンジン音はまるでディーゼルカーです。
通常の列車が13分で走るところを25分かけてとてもゆっくり走るので、馬力はあまり関係なさそうです。
機関車は小さくても連結器はいっちょ前です。
トロッコ客車は、貨車からの改造が2両(トラ700形)、DB16形機関車と同時期に新造された客車(TORA200形)が1両の計3両です。
銘板を見ると相当ご高齢です。
元々は無蓋車というタイプの貨車で、屋根無しの貨車としてバラ積みの石などの貨物を運んでいました。
貨車出身なので、足回りは非常に簡素です。
見てくださいこの板バネ!
相当ワイルドな乗り心地が味わえます。
お尻に爆弾を抱えている方は絶対に乗ってはいけません(笑)
乗車口は折戸です。
1号車は新造車なのでステップがありませんが、2号車と3号車は乗車口にステップがあります。
TORA200形は新造車なので無骨感は少し抑えめです。
車内はボックスシートになっていて、間にテーブルがあります。
座面はほぼクッションが期待できないので、揺れがダイレクトに伝わります。
一応窓があり、全開にすることでトロッコ気分が味わえます。
2号車3号車の屋根は布張です。
そして扇風機があります。
こんな感じのトロッコ列車専用の切符が発行されます。
いい記念になります。
切符の裏もカラー印刷で結構凝ってますね。
因みにこの絵のモチーフである立野橋梁、土木遺産でもあり大正時代に八幡製鉄所の鉄で作られた鉄橋です。
トロッコ列車で通ると白川第一橋梁と合わせてかなりスリルがあったのですが、現在は不通区間なので渡れません。
阿蘇山はカルデラ状になっていて、ドーナツ状に外輪山が囲み、カルデラの中は平地と阿蘇五岳と呼ばれる山々があります。
南阿蘇からは噴火していて火口見学ができる中岳は見えませんが、阿蘇五岳の一部やその周辺の山並みを見ることができます。
とても雄大で、天気が良ければ本当に気分が良くなる景色です。
この日は阿蘇の草原を守るための野焼きが盛んにおこなわれており、少しスモッグがかかっていました。
線路に沿って鉄道の通信線と思しき電線が所々あり、写真に写すとちょっと邪魔です…。
南阿蘇は湧水が豊富で、各所に水源があります。
こちらの明神池水源は線路沿いから湧水でできた池が見えます。
有名な白川水源最寄り駅は「南阿蘇白川水源」駅。
2012年にできた新しい駅です。
ちなみに日本一長い駅名の駅「南阿蘇水の生まれる里白水高原」駅は不通区間にある駅です。
南阿蘇は湧水が豊富なので、水関連の駅名が多いのが南阿蘇鉄道の特徴ですね。
阿蘇白川駅は洋風の駅舎です。
25分の乗車ですが、車掌さんによる案内放送が面白く、天気が良ければ本当に楽しい時間を過ごせます。
残念ながら不通区間にある白川第一橋梁や立野橋梁、トンネルは高森~中松間には無いので、スリル感にはちょっと欠け、地震前に比べるとやや物足りない感はありますが、初めての方であれば満足感は高いと思いますよ。
がんばれクマモト! マンガよせがきトレイン
有名なキャラクターでラッピングされ、車内に有名漫画家の方々からの色紙が飾られています。
毎日運行しています。
漫画に疎くて、この中ではドラえもんとコナンとボルボ13くらいしか分からないのですが、何だかにぎやかですね。
こんなに漫画家の方々から応援してもらえる鉄道って他にあるのでしょうか?
さんてつが描かれた色紙もありました。
乗っているだけでわくわくしますよ。
まとめにかえて
先日、2018年3月に不通区間の復旧工事が始まりました。
5年程の歳月と、約75億円の費用をかけて復旧するとのことです。
復旧にはほぼ全額国の補助が入ります。つまり税金です。
なので、今回の件は、南阿蘇だけの話ではなく、全国民が地元の地域公共交通機関の話に置き換えてみて考えなければならない話だと個人的には思います。
年間1億円程度の収入しかなく、1日に1000人にも満たないお客さん、というのが南阿蘇鉄道の地震前の現実です。これは九州の鉄道で最低レベルです。
ただ、地震前は台湾の方々はじめ、多くの外国の方が南阿蘇鉄道に乗りにきていましたし、観光面でポテンシャルがある路線ではあるのです。
各駅はほとんど無人駅ではありますが、地元の方が駅でお店をしていたりして、地域にとても根差した鉄道であることは間違いありません。
これから人口が減少していく中で、道路インフラに加えて鉄道インフラまで抱えるということの重みを考えなければならないと思います。
生活と観光の両面から必要な鉄道だ、ということで南阿蘇鉄道は復旧されるのですが、生活に必要な交通手段が果たして本当に鉄道という交通機関なのか、という視点は大事だと思います。
現在話題になっているJR北海道はじめ、鉄道の存続が危ぶまれている地域において、鉄道の意義、地域の足をどう持続可能なものにするか、という点において、感情ではなくもっと理論的な議論になっていいと思っています。
バスに転換するといい、とかデマンドタクシーなら効率的、とか最近だとライドシェアで解決!と思いがちですが、バスだって課題はたくさんありますし、極端なことを言えば朝の高校生の通学時間帯だけは需要が集中し、鉄道でないと捌ききれない、という地域もたくさんあるはずで、地域交通は単純な話ではありません。
なので、何となく感情やイメージだけで交通を考えるのではなく、地域の真の移動の実態や交通事業者が置かれている環境を丁寧に把握し、その地域のまちづくりの方針ともすり合わせながら、どのようなモードが最適なのか、生活圏単位で行政と住民と交通事業者でしっかりと考えていかねばならないと感じます。
鉄道の存廃の議論は、鉄道は理屈じゃない!という精神論に近いものがあるようでなりませんが、復旧すると決まった以上、南阿蘇鉄道で地域が最大限盛り上がるよう応援したいと思います。