くま川鉄道 田園シンフォニー乗車記
熊本県の人吉球磨地方を走るくま川鉄道の観光列車、田園シンフォニーに乗車しました。2017年の春からははぴねす♡トレインとして、観光列車として運行する際はおもてなし内容をリニューアルしたようですが、今回の記事はそれ以前のものです。
どんな車両だったのでしょうか?
先日アップしたくま川鉄道のKUMA1の紹介記事はこちら。
くま鉄 人吉温泉駅(=JR 人吉駅)には車庫があり、田園シンフォニーが留置されていました。田園シンフォニー、形式で言うとKT-500形は、これまでのKT-100及びKT-200形の置き換えとして2014年に導入された、新潟トランシス製の気動車です。春夏秋冬に加えて、白秋の5つの季節をモチーフに車体色と車内がそれぞれ異なります。
人吉駅前にはお城の形のからくり時計がありました。
こちらがJR駅舎に隣接するくま鉄の人吉温泉駅。
栗めしの駅弁などのホーム立ち売りで有名な駅弁山口のお店が駅のすぐそばにあります。
くま鉄ホームはJRホームとほぼ並行です。元JRなのですから当然と言えば当然ですね。いさぶろう・しんぺいが発車待ちです。
こちらが田園シンフォニー。白は白秋です。
ドアの窓のデザインもテーマによって違います。細かいです。こういう細かいところに気付くと、他はどうなっているのだろうと大人でもわくわくしてきます。
白秋の車内は明るい木目に白い本革です。窓は額縁のように木の縁取りがあります。網棚も木製の覆いがついていますね。床はフローリングです。
ソファーも両端に用意されています。背もたれにクッションがある席はソファー席だけなのですが、ちょっと背もたれが直角気味な気が……。
中央はボックス席です。普通列車なら全区間乗車で40分なのですが、やはり背もたれが板張りなのはきついかもしれません。ちなみに、はぴねす♡トレインとして運用する際は80分程度の運行時間となります。途中駅で長時間停車もあり、ずっと座っているわけではないのと、楽しく過ごす時間なので板張りの背もたれは気にならないという判断なのかもしれません。
続いて、茶色です。テーマは冬です。
派手目のソファ席です。テーブルの形が独特です。
背もたれがめちゃくちゃ湾曲していますね。
真ん中にボックス席があるのは全テーマ共通の構造です。こちらは確か初期導入車で、ボックスのテーブルにライトが付いています。
あれ、ライトがはずされていますね。不具合があって外されて、後の導入車両は設置自体見送られたのかもしれませんね。
続いて青色。テーマは夏です。
青系の車内はさわやかですね。
おおよそ車内の構成は全テーマ似ていますが、全く同じではありません。それぞれ違うことに面白みがあるということなのでしょう。
本棚があります。
熊本関連の本や子供用の鉄道の本がありました。
こちらは全てボックス席ではなく、テーブル無しのクロスシートもあります。
ボックス席もシートの柄はそれぞれ異なっています。
続いて、うす黄色の車両(左)、テーマは春です。
黄色系の暖色でまとめられています。
花柄のシートも春らしい感じですね。
最後に赤です。テーマは秋です。
紅葉をイメージした赤なのでしょう。
テーマに沿った絵⁉も飾られています。
運転席横は、こども展望台になっています。大人のお友達は座らないようにしましょう(笑)
運転台です。ワンハンドルでカラーモニター付きです。
おもてなし駅要確認とあります。駅によっては、出発信号機が無い駅もあり、運転士のさじ加減で早発できてしまうからでしょう。
運賃箱があるのは、普通列車として使用するからです。こんな車両でワンマン運行の普通列車となるのですから、贅沢すぎる普通列車ですね。
観光列車として運行される際は、車内販売があります。焼酎アイスに味噌まんじゅう、つくしいばらのアイスです。車内ではなぜかアイス食べたくなりますよね(笑)
人吉で駅弁を買っておくのもおすすめです。車内はテーブルがあり、お弁当を広げるのに最適です。
鶏のてりやき弁当と鮎すしです。
うまそう。
目が合います(笑)
おかどめ幸福駅は付近の岡留熊野座神社が幸福神社と呼ばれているので付いた駅名で、縁起がいいですね。下車して観光できます。
他のおもてなしについては以下のURLで確認してください。
ベートーベンの田園の楽譜です。だからシンフォニーなのね。
沿線は田園風景であることは間違いないです。
あさぎり駅が線内唯一の交換駅です。行き違い停車中にスタフとタブレットを交換します。人吉温泉~あさぎり間とあさぎり~湯前間は物理的にそれぞれ1列車ずつしか入れないようになっています。ちなみに21世紀も17年目なのに電子閉塞ではないのですね。
田園シンフォニー、いかがだったでしょうか。水戸岡氏のデザインする車両は全国各地にあり、雰囲気はみな同じように見えます。それは、本人曰く実際にパーツは流用しているから、とのことですが、実は車両ごとの細かい違い、例えば使われている木材の違いや装飾品、テーブルの形の違いなどに気付くと、それはそれは本当に全て違い、手間がかかっているのだと気づきます。
その分お値段もするでしょうから、財政的に厳しい事業者にとって導入に際し負担でしょうし、メンテナンスも今後の負担となることでしょう。
それでも、木材やガラス、本革など、本物の素材と丁寧な造りがもたらす、ちょっとした感動の積み重ねは、利用者はもちろん、沿線の多くの方の誇りとなることだと思います。
誇りだけでは鉄路や美しい車両は維持できませんが、域外から多くの方々をもてなし、お金を落としてもらうことで、鉄路や車両が維持され、地域も盛り上がることが出来れば最高だと思います。(私は鉄道存続運動家ではありませんので念のため(笑))
KT-500形車両は、全ての列車で使用されていますので、車両だけならいつでもくま川鉄道の列車に乗れば味わえます。
普通列車でこのクオリティを毎日味わっている沿線の高校生は、進学や就職でほかの地域の普通列車に乗った時の落差に驚くでしょう(笑)
考えようによっては、くま川鉄道は全列車が観光列車とも言え、いつ来てもそれなりに楽しい移動になること請け合いです。終点湯前にはまんが美術館があり、球磨地方までわざわざ漫画を読みに来るというのもまた一興です(笑)
人吉までお越しになられた際は、ぜひくま川鉄道で湯前まで足をのばしてみてはいかがでしょうか?